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コラム 2026年10月26日

「安全なはず」が通用しない時代の守り方|PHP2Shellから考える、セキュリティとの向き合い方

「脆弱性がない」という思い込みこそが、最大のリスクかもしれません。

2026年10月、世界中で利用されているプログラミング言語「PHP」に、重大な脆弱性が見つかりました。

「CVE-2026-109618」「CVE-2026-109619」。通称、PHP2Shell。外部から不正にプログラムを実行されるおそれがある、非常に深刻な問題です。

ただ、今回私たちが特に気になったのは、その深刻さだけではありません。

少なくとも10年以上前から存在していた可能性のある問題が、最先端のAIを使った調査によって見つかった、と報じられていること。新しく生まれた問題ではなく、ずっと前から存在していた弱点が、今になって明らかになったわけです。

そして、これはPHPだけの話ではありません。

ほかのプログラミング言語やソフトウェアにも、同じように弱点が潜んでいる可能性はあります。ただ、まだ見つかっていないだけ、というケースも多いのではないでしょうか。

むしろ、世界中で広く使われている有名なPHPだからこそ、多くの人の目で調べられ、脆弱性が見つかり、広く知られ、修正版が公開されて対策できた。そう考えることもできます。

大切なのは、どんな技術を使っていても「脆弱性は見つかるもの」と受け止めて、見つかったときにすぐ動ける状態にしておくこと。「これまで」と「これから」で、セキュリティに対する意識を少し変える必要がある。今回の出来事は、そんなことを考えさせられる象徴的なニュースでした。

※ 発見の経緯や存在していた期間は、各社の発表・報道に基づきます(出典は記事の末尾)。

脆弱性は、突然生まれるわけではありません。

そもそも脆弱性とは、システムやソフトウェアにあるセキュリティ上の弱点のことです。

家に例えるなら、玄関にはしっかり鍵がかかっているのに、換気口や配管から侵入できてしまうようなもの。つくった側が想定していなかった場所に、思わぬ抜け道があるかもしれないのです。

玄関の前では警備員が見張っていても、屋根の換気口・エアコンの配管・排水管など、想定していなかった場所から悪者が家の中に入り込んでいるイラスト
玄関は安心でも、思いもよらない場所に“抜け道”があるかもしれません。

そして、ここが大切なところ。

脆弱性が
見つかっていない
≠
脆弱性が
存在しない

脆弱性が見つかっていないことと、脆弱性が存在しないことは、まったく違います。何年も前から存在していた弱点が、ある日突然、見つかることがあります。昨日まで何の問題もなく動いていたシステムが、今日も安全とは限りません。

そして、おそらくこうした発見は、これからも続いていくでしょう。新しい技術だけが危険なのではありません。むしろ、長年使われてきたソフトウェアや機器にも、まだ見つかっていない弱点があるかもしれません。

古いから安心。今まで問題がなかったから安心。そんな考え方も、少し見直す必要がありそうです。

危険にさらされるのは、サーバーだけではありません。

脆弱性と聞くと、Webサイトやサーバーの話だと思われるかもしれません。でも、実はそれだけではありません。

WebサーバーやOS、データベースはもちろん、Wi-Fiルーター、無線LANのアクセスポイント、ネットワークカメラ、スマート家電、IoT機器、複合機、監視設備など。今では、身の回りにある本当にたくさんの機器がネットワークにつながっています。そして、そのほとんどにソフトウェアが組み込まれています。

管理が行き届いていないネットワークカメラから侵入され、Wi-Fiルーター・アクセスポイント・Webサーバー・スマート家電・複合機・IoT機器・監視設備などへ被害が広がっていくイラスト
管理が行き届いていない1台が入り口になり、被害がほかの機器へ広がることも。
  • Webサーバー・OS・データベース
  • Wi-Fiルーター
  • アクセスポイント
  • ネットワークカメラ
  • スマート家電
  • IoT機器
  • 複合機
  • 監視設備

便利な時代になりましたが、その分、攻撃される可能性のある場所も増えました。例えば、管理が行き届いていないネットワーク機器が侵入のきっかけになり、そこから別の機器やシステムに被害が広がることも考えられます。

インターネットにつながるものは、すべて攻撃の対象になり得る。もう、サーバーだけを守っていれば安心という時代ではないのかもしれません。

AIの進化が、脅威を変えていく。

AIの進化には、私たちも日々驚かされています。これまで何時間もかかっていた調査や分析が、あっという間にできるようになりました。開発の現場でも、AIは欠かせない存在になりつつあります。

ただ、少し考えてみると、この便利な技術を使えるのは、私たちのような開発者だけではありません。攻撃する側も、同じようにAIを使えるわけです。

守る側のAI

調査や分析があっという間に。開発の現場でも欠かせない存在に。

×
攻撃する側のAI

脆弱性を探す、不正アクセスを試みる、攻撃の方法を分析する。

これまで専門的な知識や多くの時間が必要だった作業も、AIによって効率化される可能性があります。特に気になるのは、これまで見過ごされてきた弱点が、AIによって次々と見つかるようになるかもしれないこと。

  • 何年も前につくられたソフトウェア
  • 長い間アップデートされていない機器
  • これまで何の問題もなかったシステム

そうしたものが、ある日突然、攻撃の対象になるかもしれません。守る側だけでなく、攻撃する側も進化している。しかも、ものすごい速さで。

もちろん、AIによって脆弱性が早く見つかること自体は、良いことでもあります。ただ、その発見が悪用される可能性もある。そんな時代になってきたのだと思います。

すべてのシステムに、脆弱性があると考える。

「脆弱性はないはず」

「まだ見つかっていないだけかもしれない」

少し極端に聞こえるかもしれませんが、これからはそんな考え方も必要なのではないでしょうか。

もちろん、私たち開発者は、できる限り安全なシステムをつくる努力を続けています。設計や開発の段階からセキュリティを考え、問題が起きないようにする。それは当然、大切なことです。

ただ、どれだけ丁寧につくっても、すべてのリスクをなくせるわけではありません。システムそのものだけでなく、利用しているソフトウェアやサーバー、ネットワーク機器などにも目を向ける必要があります。

大切なのは、守り続けること。

システムは、完成したら終わりではありません。公開してからが、本当の始まりです。

では、どうすればいいのでしょうか。私たちは、決して難しいことばかりではないと思っています。

防ぐ
  • 定期的にアップデートする
  • きちんとメンテナンスする
  • ネットワーク機器も更新する
  • 使っていない機能を止める
  • アクセス権限を見直す
  • 重大な脆弱性が見つかったら、いつものメンテナンスを待たず早めに対応する
+
見つける
  • 日頃から監視しておく
  • 何かあったときに、できるだけ早く気づける仕組みをつくる

それでも、すべての侵入を完全に防ぐことは難しいかもしれません。だからこそ、何かあったときに、できるだけ早く気づけることが大切です。

防ぐこと。そして、見つけること。
この両方を意識することが、これからはますます重要になっていくと思います。

PHPをお使いの方へ|PHP2Shellへの対応メモ
  • 修正版へ更新:PHP 8.2.35 / 8.3.36 / 8.4.27 / 8.5.12 以降(それぞれの系統の修正版)
  • PHP 8.1以前はサポートが終了しています。サポートされているバージョンへの移行をご検討ください。
  • WAFなどによる対策は、更新までの一時的な緩和策です。根本的な対策はPHP本体の更新です。

どのバージョンで動いているか分からない、更新を任せたい、という場合はご相談ください。

外側だけでなく、内側からも守る。

ここで、もう一度、家に例えて考えてみます。玄関に頑丈な鍵をつけて、防犯カメラも設置する。もちろん、とても大切な対策です。

でも、もし換気口や配管など、思いもよらない場所から侵入されてしまったら。玄関だけを見張っていても、気づけないかもしれません。

玄関は警備員がブロックしていても、換気口・排水管・エアコンの配管から悪者が入り込む。家の中の見守りカメラが、その不審な動きに気づいているイラスト
玄関を固めたうえで、家の中にも見守りを。入り込まれても、早く気づける。

システムも同じです。外からの不正アクセスを防ぐだけでなく、内部でおかしな動きが起きていないか。普段とは違う通信が発生していないか。万が一、侵入されてしまったとしても、できるだけ早く気づけるようにしておきたい。

外側だけでなく、内側からも見守る。
これからは、そんな考え方がもっと大切になると思っています。

AIの脅威には、AIの力で立ち向かう。

攻撃が高度になり、自動化も進んでいく中で、人の目と手だけですべてを監視するのは、なかなか難しいことです。だからこそ、守る側もAIの力を借りる必要があると考えています。

たくさんのログやアクセス情報の中から、いつもと違う動きを見つける。異常があれば、できるだけ早く知らせる。そして、人が適切に判断し、対応できるようにする。

新しいセキュリティの仕組みJ-Shield(ジェイ・シールド)

目指しているのは、外からの攻撃を防ぐだけでなく、システムの内側からも異常を見守ること。AIによるサーバー診断と、バックアップ・ログの保管・見張りと通知の保守で、「いつもと違う」に早く気づける運用をつくります。

J-Shieldの詳細を見るモニター企業を募集中

もちろん、AIがあればすべて安心というわけではありません。人による管理や判断と、AIによる継続的な監視。それぞれの良さを組み合わせることが大切だと思っています。AIによって生まれる新しい脅威に、AIの力も借りて向き合っていく。そんな仕組みを、これから形にしていきたいと考えています。

安全を信じるのではなく、安全を守り続ける。

これから先、インターネットから脅威がなくなることは、おそらくないでしょう。新しい技術が生まれれば、新しい便利さとともに、新しいリスクも生まれます。そして、昔から使われている技術の中からも、まだ見つかっていない弱点が明らかになっていくと思います。

でも、必要以上に怖がることはないと思っています。大切なのは、そうした可能性があることを知り、できる対策を一つずつ続けていくこと。

「安全なシステムをつくりました」で終わらせない。

つくったあとも、見守り、手を入れ、守り続ける。

私たちは、これからもそんな姿勢で、お客様のシステムと向き合っていきたいと思っています。

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